3年に一度実施される特定建築基準適合判定資格者講習があります。講習を受けて、最後の終了考査に合格すると、特定建築基準適合判定資格者として、建築基準法第6条の3第1項ただし書きにある特定構造計算基準に適合するかどうかを審査することができます。
その過去問が日本建築防災協会のHPに掲載されているのですが、解説がないため解答案を作成してみようと思います。
講習の受講案内のリンク 日本建築防災協会HP
特定建築基準適合判定資格者講習|(一財)日本建築防災協会|建築物の防災並びに維持管理制度・技術の調査・研究。資格講習、耐震チェックプログラムの紹介。 (kenchiku-bosai.or.jp)
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令和5年度 問17
鉄骨造建築物の筋かい端部の保有耐力接合の検討結果に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。ただし、柱はり接合部、筋かい材及びガセットプレートに用いられる鋼材は400ニュートン級炭素鋼(基準強度235N/mm²、引張強さ400N/mm²)、ファスナー(高力ボルト)の引張強さは1000N/mm²とし、M16の高力ボルトの孔径は18mmである。筋かい材は2Ls-60×60×5(断面積1本あたり580.2mm²)、ガセットプレートはPL9、高力ボルトはM16が4本(断面積1本あたり201mm²)、縁端距離40mm、ボルト間隔60mm。
1.保有耐力接合であると判断される。
2.筋かい軸部が十分な塑性変形をする前に筋かい端部の破断が生じるおそれがあると判断される。
3.筋かい軸部が十分な塑性変形をする前にファスナー(高力ボルト)の破断が生じるおそれがあると判断される。
4.縁端距離が不足していると判断される。
【過去の考査問題の出典】
出典:令和5年度 特定建築基準適合判定資格者講習 修了考査結果 2.考査問題 から引用しました。
解答(案)
解答は、2(筋かい軸部が十分な塑性変形をする前に筋かい端部の破断が生じるおそれがある)。
筋かいの保有耐力接合は、5つの破断形式ごとの破断耐力 Aj・σu の最小値が、筋かい軸部の降伏耐力に安全率を乗じた α・Ag・F(炭素鋼はα=1.2)以上であることを確認します。本問では、①筋かい端部(有効断面)の破断耐力だけが不足します。カギは山形鋼の突出脚の無効長さhn(ボルト4本→hn=0.33h1)です。(R5講習テキスト S-p.5、2020年版 建築物の構造関係技術基準解説書 付録1-2.4〔具体的計算方法〕(2) p.620〜625)
解説(検討の流れ)
右辺(軸部降伏×安全率):1.2・Ag・F=1.2×(2×580.2)×235≒327.2kN
① 筋かい端部(有効断面)の破断 A1=Ag−Ad′−hn・t(式 付1.2-12)。山形鋼でボルト4本のとき、突出脚の無効長さはhn=0.33h1(付表1.2-1)。
A1=580.2−18×5−0.33×60×5=391.2mm²/本 → 2本で782.4mm²
Aj・σu=782.4×400=313.0kN < 327.2kN → NG(解説書 p.623 式(付1.2-12)・p.624 付表1.2-1)
② ファスナー(高力ボルト)の破断 Aj・σu=0.75×(4本×2面×201)×1000=1,206kN ≧ 327.2kN → OK(p.622 式(付1.2-8))
③ はしあき部分の破断 筋かい側:4×40×5×2×400=640kN → OK/ガセット側:4×40×9×400=576kN → OK(p.622 式(付1.2-9a)(付1.2-9b))
④ ガセットプレートの破断 A4=2/√3×180×9−18×9≒1,709mm² → 約684kN → OK(p.622 式(付1.2-10))
最小値は①の313.0kNで、327.2kNを下回るため、筋かい軸部の降伏(塑性変形)より先に筋かい端部の有効断面で破断するおそれがあります。
各選択肢の判定
1.✕ ①がNGのため、保有耐力接合とは判断できません。突出脚の無効長さを誤って0.25h1(5本の値)とすると332.2kN>327.2kNで「OK」に見えてしまう、絶妙なひっかけです。
2.〇(適切)👉 これが正答 上記のとおり、端部(有効断面)の破断が先行するおそれがあります。
3.✕ ボルトのせん断破断耐力は1,206kNで大きく余裕があり、ボルト先行破断とはなりません。
4.✕ はしあき部分の破断耐力は640kN(筋かい側)・576kN(ガセット側)でいずれもOK。仕様上の最小縁端距離(M16・せん断縁で32mm)に対しても40mm≧32mmで満足しており、縁端距離不足とは言えません。
ポイント
- 保有耐力接合の判定は5つの破断形式の最小値で行う(テキストS-p.5)。1つでも α・Ag・F を下回れば不成立。
- 山形鋼筋かいは突出脚の無効長さhn(付表1.2-1)に注意。ボルト本数で値が変わる(2本0.7h1/3本0.5h1/4本0.33h1/5本0.25h1)。
- 安全率αは炭素鋼1.2・ステンレス鋼1.5(テキストS-p.5)。
最後にルート2主事試験に持ち込み可能な図書の紹介
修了考査時に持込可能な図書なので、考査時までに購入しておくのがおすすめです。
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