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設計も施工も工程がタイトなとき、現場では「どこからが“工事の着手(着工)”なのか」がしばしば問題になります。確認済証が下りる前に着工はできませんし、法改正をまたぐ場面では「工事の着手の時点」が既存不適格の判定にも関わってきます。
実務で意外と迷うこのテーマを、根拠と実例で整理します。
「工事の着手」は確認済証の前にはできない
まず大前提として、建築基準法第6条にこう定められています。
建築主は、…建築物を建築しようとする場合…当該工事に着手する前に…確認済証の交付を受けなければならない。(第6条・抜粋)
つまり、建築確認済証がないと工事の着手はできません。工程を急ぎたいときほど、この「着手の線引き」が効いてきます。
(補足)法改正をまたぐケースでは、工事の着手がいつかによって、改正前の基準が使える「既存不適格」になるかどうかが変わることもあります。後述のとおり、これは法第3条に関係します。
何をしたら「着手」か——該当する行為・しない行為
「工事の着手」は、「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」(編集:日本建築行政会議/発行:一般財団法人建築行政情報センター〔ICBA〕)にまとめられています。全国の所管行政庁が取りまとめている本なので、多くの行政庁で通用する内容です。迷ったら、まずこの本を見るのが早いです。
「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」2026年度版が、2026年10月16日に発売されます。確認申請で判断に迷いやすい扱いを、審査する側(日本建築行政会議)が事例で整理した本です。この記事で取り上げた「工事の着手」の扱いも、この本にまとめられています。2022年度版は品切れなので、これから買う方は2026年度版がおすすめです。
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発売日・価格・買い方は「基準総則・集団規定の適用事例」2026年度版は10月16日発売にまとめています。
紹介している書籍は、上のリンクから購入できます。
その整理によると、おおむね次のように分かれます。
「工事の着手」に該当する例
- 杭打ち工事
- 地盤改良
- 山留
- 根切 に係る工事 など
「工事の着手」に該当しない例
- 地盤調査
- 現場の整地 など
ただし、最終的な判断は所管行政庁によります。迷うときは、書籍を参照しつつ、工事現場を所管する行政庁に相談するのが確実です。
グレーゾーンの実例——「地盤改良」は着手?整地?
実際にこんな相談を受けたことがあります。
杭工事の業者さんから、「現場の地盤が悪く、杭打機を入れるために地盤改良をしてもよいか」と聞かれました。ところが、地盤改良は先ほどの「着手に該当する例」に挙がっています。一方で「現場の整地」は非該当です。
これは、どちらにあたるのか——。
そこで私は、「設計地耐力に寄与しない(支持力を期待しない)地盤改良なので、現場の整地として行うと所管行政庁に説明してはどうか」とアドバイスしました。ぐずぐずの地盤の一部に砕石を入れてならすのと実質変わらない、という考え方です。
最終的にどうなったかは分かりませんが、ポイントは、名称(地盤改良か整地か)よりも“実態”で判断されるということ。そして、最後は所管行政庁の判断になるので、事前相談が安全です。
法的根拠の小ネタ——なぜ「法第3条」に書いてあるのか
参考図書では、「工事の着手」の該当法令が建築基準法第3条になっています。第3条は「(適用の除外)」——一見、工事の着手とは関係なさそうに見えます。
ところが法文を読むと、同条第3項第3号に「工事の着手が…」としっかり書かれていました。法改正後に工事の着手をした建築物は既存不適格の扱いにならない、という文脈です。
また同じ図書では、参考として「建築工事着工の時点(昭和41年3月17日 住指発第83号)」が挙げられています。ここでは、「地耐力試験のために土地を掘削するだけでは、工事の着工に該当しない」と回答されています。短い照会・回答ですが、図書では細かく整理されていて、その後さまざまな相談があったことがうかがえます。
まとめ
- 着工は確認済証の前にはできない(法第6条)。工程を急ぐときの大前提。
- 着手に該当する例:杭打ち・地盤改良・山留・根切/非該当:地盤調査・整地。
- 判断は名称より実態ベースで、最終的には所管行政庁。迷ったらICBA「適用事例」を参照しつつ、事前に行政庁へ相談を。


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