第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域内では、建築物の外壁またはこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(外壁後退距離)を1.5m又は1.0m以上確保する必要があります(法第54条第1項)。
敷地の狭い場合などには、厳しい規定です。
建築基準法第54条の「外壁の後退距離」に関する緩和規定(令第135条の22第一号)について、日本建築行政会議の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」に掲載されている図2-5-3のL1・L2の測り方に、個人的に疑問を持ったので考察してみました。
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目次
はじめに:外壁後退の緩和とは
第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域内では、都市計画で定められた場合、建築物の外壁またはこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(外壁後退距離)を1.5m又は1.0m以上確保する必要があります(法第54条第1項)。
ただし、すべての部分にこの距離を確保する必要はなく、政令で定める一定の場合は緩和されます。その緩和規定の1つが、令第135条の22第一号です。
根拠法令の整理
建築基準法第54条第1項
第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内においては、建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離は、当該地域に関する都市計画において外壁の後退距離の限度が定められた場合においては、政令で定める場合を除き、当該限度以上でなければならない。
建築基準法施行令第135条の22第一号
外壁又はこれに代わる柱の中心線の長さの合計が三メートル以下であること。
この条文の重要なポイントは、長さの算定基準が「外壁又はこれに代わる柱の中心線」と明記されていることです。
「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」の図2-5-3
日本建築行政会議の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」では、上記緩和規定について以下のような図で解説されています。

図中では、L1(横方向の外壁の長さ)とL2(縦方向の外壁の長さ)の和が3m以下であれば、外壁後退距離の限度に満たない部分があっても緩和される、と読み取れます。
疑問点:L1・L2は「中心線」で測られていない?
図2-5-3をよく見ると、L1とL2の矢印は、柱(×印の部分)の外面(あるいは外壁の外面)から測っているように描かれています。
しかし、令第135条の22第一号の条文では、明確に「中心線の長さの合計」と規定されています。
そうすると、図2-5-3のL1・L2は、本来は柱の中心線(あるいは外壁の中心線)で測るべきではないでしょうか?
赤線で印を付けた位置(柱の中心線まで)が、法文の趣旨に沿った測り方になると考えられます。
また、建築基準法質疑応答集(建築基準法研究会 編、第一法規株式会社)の中には、同様の記載がされていたと思います。
実務への影響
「中心線で測るか/外面で測るか」で、L1+L2の値は柱の幅の半分(壁の厚さの半分)程度の差が生じます。
例えば、柱が120mm角であれば、L1とL2で各60mm、合計120mm(0.12m)程度の差が出る計算です。
3.0mの基準値ぎりぎりの計画では、この差が緩和適用の可否を左右する可能性があります。
安全側(厳しい側)に解釈するなら外面で測る方が建築主にとって不利になりにくいですが、法文の趣旨に厳密に従うなら中心線で測るのが正しいと考えるのが自然です。
まとめ・問題提起
・令第135条の22第一号の文言は「外壁又はこれに代わる柱の中心線の長さの合計」と明記されている。
・しかし、建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例の図2-5-3では、L1・L2が外面で測られているように描かれている。
・本記事では、法文の趣旨から考えればL1・L2は中心線で測るべきでは?と考察した。
・実務上の影響は0.12m程度であるが、基準値ぎりぎりの計画では緩和適用の可否を左右する可能性がある。
参考文献
・建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例(日本建築行政会議)
・建築基準法第54条
・建築基準法施行令第135条の22
※本記事は筆者個人の見解です。実際の運用や審査における取扱いは、特定行政庁や指定確認検査機関により異なる場合があります。具体的な計画については、必ず審査機関にご確認ください。
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