がけ条例とは?がけの近くの土地で家を建てるときの注意点【構造設計をしていた一級建築士が解説】

がけ条例とは?がけの近くの土地で家を建てるときの注意点 家づくり

「がけの近くだから」と、相場より安く売り出されている土地を見かけることがあります。でも、その安さには理由があるかもしれません。「がけ条例」を知らずに買うと、思ったような家が建てられなかったり、安全のための擁壁工事で数百万円かかったりすることもあります。

ここでは、構造設計をしていた一級建築士の立場から、「がけ条例とは何か」「がけの近くの土地で家を建てるときに気をつけること」を、できるだけわかりやすく解説します。

そもそも「がけ」とは?

「がけ」とは、ざっくり言うと急な斜面や高低差のある段差のことです。たとえば、土地の隣が切り立った斜面になっていたり、敷地の中に大きな段差があったりするケースです。

建築のルールの世界では、ただの「斜面」ではなく、一定の高さと急さ(勾配)を超えたものを「がけ」として扱います。どのくらいから「がけ」とみなすかは地域ごとに決められていますが、「高さ2mを超え、勾配が30度を超える斜面」を目安にしている自治体が多いです(※自治体によって差があります)。こうしたがけは、地震や大雨のときに崩れる危険があるため、近くで家を建てるときにルールが設けられているのです。

「がけ条例」とは?

ひとことで言うと、がけの近くで家を建てるときのルールです。

じつは「がけ条例」という名前の法律があるわけではありません。各都道府県(や一部の市)が独自に定めている建築基準法施行条例の中の、がけに関する規定を、通称として「がけ条例」と呼んでいます。

ポイントは、地域によって中身が違うこと。だから「隣の県では大丈夫だったのに、こちらでは引っかかった」ということが起こります。

法律のどこに根拠があるの?

「がけ条例」のおおもとは、建築基準法にあります。まず、建築基準法は第1条で、その目的をこう定めています。

建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り…(第1条)

つまり、建物だけでなく敷地(土地)の安全も法律が守る対象だ、ということです。そのうえで、敷地の安全について定めているのが第19条第4項です。

建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。(第19条第4項)

ただ、ここには「具体的に何メートル離す」「どんな擁壁にする」といった技術的な数字は書かれていません。その具体的なルールづくりを各地域にゆだねているのが、第40条です。

地方公共団体は、…条例で、建築物の敷地、構造又は建築設備に関して安全上…必要な制限を附加することができる。(第40条)

この第40条にもとづいて、各都道府県が「○○県建築基準法施行条例」を定め、そこにがけのルールを書いています。これが「がけ条例」の正体です。

がけ条例にかかると、実際どうなる?

ここが一番気になるところだと思います。地域差はありますが、おおむね次のような影響があります。

  • がけから一定の距離を離さないと建てられない…多くの自治体では「がけの高さの2倍」程度を目安に、建物を離すよう求められます。土地が狭いと、建てられる範囲がぐっと小さくなります。
  • 安全な擁壁(ようへき)が必要になる…距離を離せない場合は、崩れを防ぐ擁壁をつくることが条件になります。高さ2mを超える擁壁は別途の手続き・構造の基準があり、費用も数十万〜数百万円規模になることがあります。
  • 既存の擁壁が使えないことがある…すでに擁壁がある土地でも、古いものや基準に合わないものは安全と認められず、結局つくり直しになるケースがあります。
  • 間取り・配置が制限される…上記の結果、「日当たりのいい南側に寄せたかったのに置けない」など、希望の間取りが叶わないことがあります。

つまり、土地代が安くても、トータルで高くつくことがある、ということです。

がけ条例の主な中身

条例によって違いはありますが、おおむね次のような項目が定められています。

  • 「がけ」の定義(高さや勾配。たとえば「高さ2mを超え、勾配30度を超える傾斜地」など。※自治体差あり)
  • がけに近接して建てる・敷地を造成するときの規定(離す距離や擁壁の条件)
  • 高さ2mを超える擁壁をつくる場合の構造の規定(施行令第142条に上乗せする形)
  • がけの上にある敷地の排水に関する規定

大事なのは「がけの上か、下か」

見落とされがちですが、がけの「上」に建てるか「下」に建てるかで、危険のしくみがまったく違います。

  • がけの下に建てる場合…がけが崩れたとき、落ちてくる土砂が届かない位置にする必要があります。
  • がけの上に建てる場合…がけが崩れたとき、自分の建物が一緒に崩れ落ちない位置にする必要があります。

そのため、離すべき距離の考え方も変わってきます。ここは特に注意が必要なところです。

まとめ:契約前に、建築士に相談を

  • 「がけ条例」は、がけの近くで安全に家を建てるためのルール。
  • 法律(建築基準法 第19条・第40条)→ 各地域の条例という流れで定められていて、地域ごとに中身が違う
  • がけ条例にかかると、建てられる範囲が狭くなったり、擁壁工事で費用がかさんだりすることがある。

不動産会社が調べて重要事項説明書に書いてくれることも多いですが、地域性の強いルールなので、見落としや解釈の差が出ることもあります。最終的には、計画する土地のある自治体(都道府県・市)の条例を必ず確認することが欠かせません。

がけの近くの土地が気になったら、契約してしまう前に、その地域の事情に詳しい建築士に一度相談することを強くおすすめします。「安く買えた」が「結局高くついた」にならないために。

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